35.オリンポスの戦い

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 ミヒャエル・バラックとクリフ・リチャーズの二人は、オリンポスに到着後、地下水脈の掘削に没頭していた。マーズ・エンタープライズが下ろしていった化学装置で、当座の生活に必要な酸素、水素やメタンは備蓄されていたが、それは生命を維持できるという最低限の量だ。高度な活動をしていくためには、もっとエネルギーが必要だった。その素となる水素は地下深くから汲み上げる水から得る。無事オリンポスに着いた今、水脈を掘り当てることが、喫緊の重要任務となっていた。 「せめて、強力な動力源があと一つか二つあればなあ…。太陽電池が使えない夜も、掘削が続けられたら、もっと早く掘り進められるのに」  アンドレッティがぼやいた。 「ないものねだりをしても仕方ない。使える電力は全て水素製造と掘削に回そう。新しいビークルの燃料電池も使えるんじゃないか」 「まだ未調整ですが、燃料電池だけなら私でも調整可能です。すぐに使用できるようにします。ところで、その新しいビークルのことなんですが」  アンドレッティがちらりとマディソンを見た。 「どうした、何か問題でもあるのか」 「出発前に名前を決めたいのですが…。ビークルって呼ぶのは何だか味気なくて」 「何か案でもあるのか。命名者の栄誉に預かりたいらしいな」  アンドレッティはにやりとした。 「外観を見て、ピンと来たんです。『タンク』ってのはどうでしょう」 「戦車か?」 「そうです。歴史の本で見た、第二次世界大戦時の戦車に形がよく似ていると思ったんで」
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