39.オリンポス救援隊

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 ハブや帰還船カールなど数棟が散らばるだけの貧弱なコロニーに、歩くような速度で踏み入ってきたビークルに向かって、マディソンは無線を入れた。与圧服姿のマディソンは、屋外でキャメルを出迎えた。 「早速だが、カールの後方にある、燃料製造棟の近くに停車してもらいたい」 「了解」  返答したのは、操縦していたスチュワート・マググレイスだ。 「ペーターの調子が良くない。肺血栓を起こしかけているのかもしれない。ベッドと医療キットを用意して欲しい」 「了解した。ミヒャエル、聞こえたか? 医療キットはハブにあったよな」 「その通りです。治療はハブで行いますね?」  すぐにミヒャエル・バラックの声がした。 「それがいい。カールは、巨体のバーグマンには狭すぎる」  キャメルのキャビンから梯子を降りてきたマクグレイスは、地面に足をつけた瞬間、大きくよろめいた。マディソンが転ばないように腕を支えた。 「貧血気味かもしれない。ピカールたちと別れてから、ほとんど眠ってないので」  照れ笑いしたマクグレイスの肩を、マディソンがポンと叩いた。 「いい仕事をしたな、スチュワート。この一日半のアドバンテージで、彼らが助かる確率はかなり高まった。後は任せろ。メタンと水素を積んだら、すぐにアンドレッティが出発する。キャンプの四人は、首を長くして救援隊を待っている」 「すぐに出発するって?」  マクグレイスは、先ほどのアンドレッティと同じ質問をした。 「メタン、水素、酸素、水の準備はすでに整えてある。積み込んだら、すぐに奴が一人でキャンプ地に向かう。今はアンドレッティのスピードに賭けるしかない」 「しかし…」  マクグレイスは口ごもった。 「何か問題でも?」
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