39.オリンポス救援隊

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「キャメルの状態が心配です。この一カ月間、ろくにメンテナンスもしないで走り詰めだったんですから」 「調子が悪い部分でもあるのか」 「今のところ、走行には支障ありません。でも、エンジンのパワーが少し落ちたような気がします。この砂嵐の中、走り通してきたんです。最低でも、吸気系、特にフィルターだけは交換すべきだと思います。エンジンが止まってしまったら、目的地には一週間ではとても着けません」 「だが、フィルターの交換ユニットはない」 「それなら、せめてフィルターを洗浄してから出発することをお勧めします」 「アンドレッティ」  マディソンは無線に向かって怒鳴った。 「何でしょうか」 「キャメルの吸気フィルターを洗浄する。どのくらい時間が必要だ?」 「取り外しだけなら、数分で済みますが、洗浄するとなると…。エアポンプも用意しなければならないので、少なくとも一時間はないと」 「分かった。すぐに実行したい。外に出てきてくれ」  キャメルのエンジン・フィルターを整備している間に、ペーター・バーグマンをハブに収容した。バーグマンは顔が紫色に変色し、呼吸が荒かった。足元がふらつき、一人で歩くのもままならない様子だった。普段は背筋をピンと伸ばして堂々と闊歩する大男だけに、バラックの肩を借りながら、背中を丸めてよろよろと歩く姿には、悲壮感が漂っていた。すぐに、肺血栓の治療薬とビタミン剤を点滴することにしたが、ゆっくりと静養できる時間はない。一刻も早くタンクの調整を済ませ、走れる状態にしなければならないのだ。 「少し横になったら、すぐに取り掛かります」  バーグマンはハブに入る直前、マディソンに向かって、蚊の鳴くような声で言った。 「アンドレッティが間に合えば、時間的な余裕が持てる。少しくらい遅れても構わん。それより、タンクの仕上げをしっかり頼むぞ」  マディソンはそう言って、ハブのエアロックを開けた。 「バラック、室内の酸素濃度を高めにしておけよ。回復が早くなる」
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