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ハブの外は、昨日までと同じか、それ以上の激しい嵐だった。砂塵は猛烈な勢いで地表を走り、旋風を伴って勢いよく巻き上がっていた。視界は相変わらずほとんどない。
「嵐の中を歩くのは、しばらくご免だと思っていたんだけどな」
ケイは、ハブのエアロックから一歩踏み出し、ジェニファーの姿を探した。彼女は崖の下に立ち、小さなハンマーで岩を叩いていた。手には分析のための小さな装置を持っていた。
「どうだい、世紀の大発見になりそうか」
問い掛けには答えず、ジェニファーは分析装置のディスプレーをじっと見ていた。
「まさか。こんなことが…」
彼女は再び、崖の別の場所から岩石を削り取り、分析器に掛けた。ケイにはさっぱり訳の分からない曲線が画面に現れていた。ジェニファーの手がかすかに震え始めた。
「一体どうしたんだ。この崖に何かあるのか」
ケイはカメラのスイッチを入れ、彼女に向けた。ジェニファーはもう一度、さっきと同じように、別の場所の岩石を調べた。
「間違いないわ」
ジェニファーはカメラを構えるケイの方を見て言った。
「これはリン鉱石よ。混じり気なしの高純度。この崖全体がそうだとしたら、埋蔵量は莫大なものよ」
ジェニファーは突然、手に持ったハンマーを投げ捨て、ケイに抱きついてきた。
「凄い、凄い大発見よ」
ジェニファーは抱き合ってキスする時のように、背中に腕を回してきた。二人のヘルメットの風防がゴツゴツと当たった。
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