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最後の晩餐で腹が膨らんだせいで、四人は早く就寝することにした。酸素、体力の消耗を減らすには、寝るのが一番だ。
「ケイ、起きてる?」
ジェニファーが話し掛けてきたのは、みんなで横になってから、一時間ほど後だった。
「ああ、喉が渇いて、よく眠れないよ」
「私もよ」
彼女はケイをじっと見ていた。
「水がないというのが、こんなに辛いものだとは思わなかった。渇きというより、痛みに近い。ここ二、三日は頭もぼんやりして、考えがうまくまとまらないよ」
ジェニファーの青い瞳はじっとケイの目を覗き込んでいる。
「ケイ、ごめんね。こんな旅に誘ってしまって。帰還船班だったら、こんな目に遭わずに、無事に行けたのに」
ケイは笑った。
「どうして謝るんだい。ジェニファーらしくないな。俺はまだ望みを捨てていない。みんなもそうだろう。大丈夫、絶対に助けは来るよ」
「でも、酸素はあと一日保つかどうかの量よ。覚悟はしなくちゃならないわ」
「分かってる。でも、覚悟は最期の瞬間でいいよ。それより、この旅に参加できたことを誇りに思っている。こんな経験は望んだってできるもんじゃない。凄い発見にも立ち会えたしね。ジェニファーの大発見だけは、自分でレポートしたかったけど、たとえ駄目でも、発見の瞬間はちゃんと撮影できた。ニュースではケイ・コバヤシ撮影ってクレジットが入るよ」
ジェニファーは手を伸ばして、ケイの頬をなでた。
「愛しているわ、ケイ」
ケイはジェニファーの手を握った。
「愛しているよ、ジェニファー。しかし、最後の最後まで諦めないでいよう。必ずオリンポスに行くんだ」
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