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「マディソンやブレ博士に報告するのは、構わないが、地球に伝えるのは…」
マーカスは無線機を操作する手を止め、振り返って言った。
「ケイのスクープにしろ、と言うんだろう。分かっているさ。俺もすぐに考えたよ。オリンポスに着いたら、すぐに生放送で派手にやってもらう。その方がインパクトは強いしな。このニュースが発表されたら、地球は確実に大騒ぎだ。リンの恩恵に預かりたい国が、猛烈な勢いで火星開発機構を突き上げるだろう。本部はすぐに戦略を根本から見直さなきゃならん。この大発見をスクープするまでの一週間で、今後の対応をシミュレーションする時間が稼げる。本部にとっても好都合なはずだ」
ケイは自分抜きで話が決まっていくことへの戸惑いと、今すぐにレポートできないことにいらだちを感じながらも、頭の中では原稿を推敲し始めていた。
「一つお願いがあるんだが…」
ケイはアンドレッティに向かって言った。
「地球向けの送信機と衛星のトランスポンダーをいつでも使えるようにしてもらえるよう、マディソンに伝えて欲しい」
マーカスはちょっと驚いた表情を見せた。
「当たり前じゃないか。もうとっくに使えるよ。ケイの棲みかはカールだぞ。あれには元々衛星通信用のアンテナが装備されている。大した作業をしなくても、チャンネルは開けた。それから、何っていったっけ、UNNのディレクターは?」
「デイブかい」
「ああそうだ。デイブ君に、一週間後にはケイがオリンポスに着くので、生放送枠を空けておくように伝えておいてもらうよ。忙しくなるぞ、覚悟しておいた方がいい」
「嵐の中の行軍やここでの籠城よりは、忙しい方が遥かにマシだよ」
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