42.限界

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 地上班の四人は、タンクが到着するまでの四日間、フロンティアを出発してから感じることのできなかった安堵感の中で休息した。外は相変わらずの猛烈な砂嵐で、狭苦しいハブの中で、酸素マスクや与圧服を着用する窮屈な境遇に変わりはなかったが、精神的な余裕は生活の不便さを埋めてもおつりが来た。アンドレッティを加えた五人は、フロンティアを旅だってからの出来事や、砂嵐の恐怖、フロンティアの復旧状況などを話し合いながら、タンクの到着を待った。 「スーパーグリッドの復旧はうまくいったようだ。三系統のうち、二系統が何とか使えるようになったらしい。農場は閉鎖中だが、ハブの使用は昨日のうちに再開した。ただ、肝心の核融合発電所が幾つかトラブルを抱えている。サラが付きっ切りで修理しているよ」  オリンポスは衛星経由の長距離通信装置で、フロンティアと連絡を取り合っていた。電力の回復に伴い、無線通信の頻度も通常に戻った。アンドレッティはここに来るまでの間、キャメルの無線機で、オリンポスと交信を重ね、詳しい情報を入手していたのだ。 「マイクロ波の受信装置は直せないのか」  質問したのはピカールだ。 「落雷で激しく破損したと連絡があった。ほとんど一から作り直す必要があるらしい。次のエンタープライズには送電装置用の部品を積む予定はないから、一カ月後にでるフェニックスに運んでもらうしかない」 「ということは、完全復旧は一年以上先だな」 「しばらくはスーパーグリッドのみになるが、発電所さえ完全復旧すれば、送電量は充分だ。何とか乗り切れるだろう。残念なのは、農場さ。『命の木』だけは何とか救えたようだが、野菜や果物は全滅だ。豪華なディナーはしばらくおあずけだな」 「ペドロはさぞかしがっかりしているだろうな」  ピカールは表情を曇らせた。
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