43.コロニー・オリンポス

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「こいつが地球を食糧危機から救う切り札か。この何年か、こいつを探して随分歩き回ったが、こんな場所に隠れていたとは…。全くこの星には度々驚かされるよ」 「まだまだこんなもんじゃないわよ。リンだけでなく、オリンポスの付近には、貴重な資源が山ほど眠っているはずよ。ない方がおかしいくらい」  マディソンは頷いた。 「こいつを発見したのは、このミッションで最大の誤算だったな。だが、この誤算は、当初の目的をも凌駕するくらいの価値を持つ」  アンドレッティからリン鉱脈発見の一報を受けたマディソンは、すぐにフロンティアのブレ博士に報告していた。 「ブレも驚いていたよ。ジェニー・クリフの命名と一緒に、地球に連絡したそうだ。本部は蜂の巣を突いたような大騒ぎになっているらしい」 「これで、オリンポスを建設する意義がより強くなったわ。次のマーズ・カーゴの主目的地はフロンティアではなく、オリンポスになるはずだわ。鉱石の掘削、貯蔵、運搬、それに地球に送るための荷造りもしなくちゃならない。整えなければならないインフラは半端な規模じゃないわ。その拠点にオリンポスがなるのよ。フロンティアの皆には申し訳ないけど、カーゴ船一隻分でも全然足りないくらい」 「その通りだ」  ジェニファーの言葉にマディソンが答えた。 「オリンポスでステンレス鋼やチタン鋼が量産できるようになれば、採掘に必要な構造材は自前で賄える。逆に言えば、それが賄えなければ、火星の工業は発展しない。ベルトコンベアーの支柱まで、マーズ・カーゴで運んでいたら、それだけで貨物室はいっぱいだ」  すかさずアンドレッティが言った。 「工場建設の計画も一から立て直さなきゃならないですね。必要な金属素材を集中的に生産しなくては、とてもリン鉱山の設備は賄えない」 「そうだな。そのために、まず必要なのは、リチャーズの会社との契約を見直すことだ。うちのMSやBSが工場運営に手を出せない今の状況では、フェニックスで彼の助手がやって来る一年後まで、製鋼ラインは全く動かない。だが、私は楽観しているよ。莫大な利益を生み出すことができる目途が立ったんだ。すぐにでもオーケーすると踏んでいるよ」 「俺たちBSも、その方が働き甲斐があります。取りあえず、高炉建設に一刻も早く着手したいですね」  アンドレッティは胸を張った。
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