44.スクープ

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44.スクープ

 スピーカーから流れてきたデイブ・マシューズの声は、例えようもなく懐かしく、温かい気がした。ケイはオリンポス到着後、早速カールにこもって、レポート送出の準備に入った。衛星回線が繋がってすぐに、UNNのディレクター、デイブを呼び出したのだ。  「ケイ、本当にケイか。何とか生きているようだな。地球にいる頃から随分と無茶をしてきたが、今回のは格別だぞ。経理の連中はケイの保険のことで駆け回っていたよ。保険会社が、最初の契約にない危険な任務にケイが出たということで、死亡保険金を全額払えないと通告してきたらしい。全く、取り越し苦労で済んで良かったよ。オリンポス班が全員無事に到着したニュースは、今日の朝に本部発表の一報で流した。それで、目玉のレポートはいつ送れる? 細切れでもいいぞ。スポット・ニュースに全部ぶち込んでやる」  デイブは興奮しているようだ。それもそのはず、ケイは一カ月近くも消息が不明だったのだ。中央アジアの戦場取材でさえ、連絡が途絶えた最長記録は一週間だ。ケイはすぐに短い返答をデイブに送った。 「心配かけて済まない。こんなに早く、しかも徹底的に砂嵐の洗礼を受けるとは思わなかった。でも、今まで見たことがない、飛びっきり凄い映像が撮れたよ。それと、超一級のスクープもな。あと、一時間以内に最初の短いレポートを送る。トップニュース枠を空けておいてくれ。ま、言わなくても、トップにせざるを得ないだろうけどな」
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