44.スクープ

5/5
前へ
/295ページ
次へ
 ジェニファーがオリンポス到着後、初めてカールに姿を見せたのは、七時のニュース用のコメントと六時台に間に合わなかった追加の映像を送信し終えた直後だった。 「どう、仕事は一段落ついた?」  エアロックを開けて、カールの船室に足を踏み入れたジェニファーは、きょろきょろと部屋の中を眺め回した。 「狭いながらも楽しい我が家か…」  ケイは苦笑した。確かにカールの船室は狭い。離着陸時に使用した四人分のシートは、先発隊が撤去しておいてくれた。その代わりに、放送用の小さなテーブルと椅子を二組置いただけだが、残るスペースは大人二人がやっと横になれる程度しかなかった。 「ニュースは送ったよ。オリンポス班の無事到着とジェニー・クリフの大発見、それと二つのコロニーとクリフォードとシェーファーの近況。六時と七時で放送されたはずだよ。まだまだ伝えたいことは山ほどあるけど、残りは明日だ。今日はたっぷりと仕事をした」 「地球は大変な騒ぎになっているでしょうね」 「ああ、君がとんでもないものを見つけたからな」  ケイはそう言って、ジェニファーに軽くキスをした。彼女は背中に手を回し、腕に力を込めてきた。 「今回ばかりはもう駄目かと思ったわ。無事にオリンポスに着けて本当に良かった」
/295ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加