46.悪夢

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 ジェニファーから緊急の無線連絡が入ったのは、彼女がコロニーを出発してから二時間ほど経ってからだった。採石場に野積みしてあったボーキサイトの鉱石が突然崩れて、キャメルが損傷を受けたという簡単な一報だった。無線の声は落ち着いていた。ジェニファーにけがはないという。連絡を受けたマディソンはすぐに、発電施設に行っていたBS二人を呼び出し、タンクで砕石場に向かうよう指示した。  四時間余り後にタンクが採石場に到着した時、ジェニファーはキャメルの傍らで息絶えていた。死因は窒息だった。崩れてきた直径五十㌢ほどの鉱石十数個がキャメルの生命維持装置や水素と酸素のタンクを直撃した。タンク類は全て圧壊した。  ジェニファーは、車外にいたので石の直撃は避けられ、全くの無傷だったが、救助を待つ間に、与圧服の携帯酸素ボンベが底を尽いた。バッテリーが損傷を受けていたので、タンク到着までの一時間は無線交信も途絶した。ジェニファーは最期の言葉を誰に伝えることもできなかった。
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