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<私の仕事が取り立てて重要という訳ではありません。それぞれの仕事が等しく重要なのです。誰か一人が手を抜いたり、さぼったりすると、コロニーはたちまち不安定で危険な場所になるでしょう。ここには、不要な人間は一人もいません。全員に果たすべき役割があるのです>
ケイは再びジェニファーのことを思った。彼女はどんなに危険で絶望的な状況でも、常に希望を失わず、果敢に任務に挑戦した。時に無茶な行動もあったが、その積極性が何人もの命を救った。火星に住むことのできる人間の条件。それが、その積極性や挑戦心にあることを、ジェニファーは教えてくれた。
<それは一人の人間の成長ではなくて、人類全体の進歩につながっていくと、最近思えるようになったの>
宇宙放射線にやられたクリフォードとのランデブーに成功した直後、バギーの傍らでジェニファーが漏らした言葉が脳裏に蘇った。今、目の前で語っているかのような、鮮やかな記憶だった。ジェニファーは危険に満ちた火星での任務を、こう表現したのだ。
<フロンティアってそういうものでしょう? だから挑戦する意味があるのよ。私たちが倒れたら、きっと誰かがあとに続く。そして、その挑戦は限りなく続いていく。そう信じるからこそ、頑張れるんだと思うわ>
ケイは目を閉じた。そして、しばらくの間、じっとしていた。
<きっと誰かがあとに続く>
ケイはここ数日、床に置きっぱなしになっていたカメラを手に取り、そして決意した。歯を食いしばってでも前に進まなければならない。
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