48.技術部長

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 同時に、本部は、マーズ・カーゴをより大型化した貨物船を四年後に就航させる計画を明らかにした。マーズ・カーゴは、地球から火星に向けて物資を輸送するために建造された船だ。当初は復路での貨物輸送をほとんど想定していなかった。新しい船は、火星に大量の資材を運び、帰りの便でまとまった量のリン鉱石を運ぶ完全往復利用のカーゴ船となる構想だ。  オリンポスはその就航までに、リン採掘や軌道上のカーゴ船に鉱石を届けるためのインフラを、新しいコロニーとともに整えなくてはならなくなった。ハブが届き次第、マーズ・フロンティアやオリンポスから、何人かが転勤しなければならないだろう。責任者には的場誠一郎が有力視されていた。  人と物資を運ぶ主力往還機のマーズ・エンタープライズは現在の二機から五機体制に拡充されることが本決りとなった。このうち、4号機と5号機は、月面基地を母港とする。マーズ・フェニックス三機も、運用継続が決まった。中国には遠く及ばないが、計八機で二十六人を輸送できる体制を整えたことになる。中国の植民計画発表を受け、この状況も来年には変わっているかもしれない。  ジェニー・クリフのリン鉱石は間違いなく火星開発を新たな段階に押し上げた。
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