48.技術部長

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 ケイの元には、デイブ経由でこうしたニュースが連日届いていた。本部経由でマーズ・フロンティアも伝わってきているが、大抵の場合、デイブ情報の方が早く、広範囲だった。ケイはコロニーに必要と思われる情報を、マディソンやコロニーの仲間に口頭、あるいはデータで伝えることが、ニュース送出と同時に、重要な日課になっていた。 「ケイ、最近はこっちからニュースを送るより、地球から届く方が多いんじゃないか」  ある日、いつものように、デイブからのメールの内容をピカールに伝えると、返ってきたのは、こんな軽口だった。ケイはその言葉を聞いて、かねてから考えていたことを実現する時期がきたことを確信した。 <地球から届く情報を、火星の住人たちに伝えたい>  ケイは地球のテレビ局の火星特派員である。仕事は火星のニュースを地球に届けること。それは今後とも何ら変わらない。だが、火星から発信する片道通行ではなく、地球から発せられてくるニュースを火星で広める窓口になることで、自分の仕事をステップ・アップしたいと考えたのだ。コロニーはフロンティア、オリンポスに続いて、ジェニー・クリフにも建設される。三カ所に増えると、火星コロニー間の情報共有は今まで以上に重要になる。  ケイはすぐにマディソンとピカールに自分の考えを説明した。
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