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「ようこそ、マーズ・フロンティアへ。人類史上最も遠方に設けられた居留地での生活を存分に楽しんで下さい」
宇宙服をスマートしたような与圧服のゴツゴツした手袋を差し出したのは、コロニーの司令官、ユージン・ブレ博士だった。
「マーズ・エンタープライズ1」から切り離されたカプセルは、予定から誤差百㍍以内のケルベロス平原に無事着陸した。アルミニウム合金のはしごを伝って地表に下りた四人を出迎えたのが、ブレ博士だった。
「ケイ・コバヤシです」
グローブごしなので、握手はぎこちないが、それでもブレ博士は両手でしっかりとケイの手を握ってきた。
「火星にやって来た2人目のジャーナリストだね。思うままに取材して、火星の住人たちの偉大な挑戦の様子を地球に届けて欲しい」
ヘルメットのシールドには、火星の乾き切った赤茶色の大地が反射していた。その奥で、ブレ博士が微笑んだのが分かった。
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