6.農場

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「地球を経つ時とエンタープライズの中で、DNAの修復を早める薬を注射されたね。薬剤の効果はおよそ半年あるが、あれだけでは不十分だ。やはり被曝量そのものを抑えなければならない。火星コロニーの年間被曝量は上限二〇ミリシーベルト。農場は最も被曝量が多くなる施設なので、このバッジで特別に管理しているのだよ。快適さの余り、つい長居をしてしまう所でもあるしね。大まかに言えば、一日の滞在は三時間が限度。あと、もう一つ注意して欲しいのは、あれだ」  ブレ博士が指差した先には、赤と緑が縦に並んだ四角いLEDランプが、ドームの天井付近からぶらさがっていた。どこからでも見えるように、大きなランプは四方を向いていた。まるでひと昔前の交通信号機のようだ。今は緑のランプが点灯している。 「ここに降り注ぐ宇宙線量はほぼ一定だが、例外はある。太陽フレアが起こったときのバーストだ。時には被曝量が瞬間的に平常時の数百倍に達する。これはきちんと回避しなけなければ、生死に関わる。しかし、幸いフレアは発生の感知が可能だ。万一太陽でフレアが起こったら、到着までの猶予は十数分。まず警告ブザーが鳴る。緑のランプが点滅したら、すぐに今入って来たエアロックに逃げ込んで欲しい。あそこには完璧な防御措置を施してある。危険時間の一分前から赤ランプが点滅する。赤ランプが完全点灯している時に、まだここに立っていたらアウトだ」
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