8.ダンクシュート

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8.ダンクシュート

 バスケットボールのコートは農場の入口から最も遠い一画にあった。ストリートバスケットのように、半面だけのコートで、どうやって作ったのか分からないが、樹脂製と思われるグリーンのシートが敷いてあり、そこにフリースローゾーンのラインが引いてあった。リングの高さは確かに地球よりかなり高い。ペドロの収録が終わり、コートを訪れた時は、3オン3の真っ最中で、プレーヤーたちが盛んに声を出しながら、パスを要求し合っていた。コートサイドでは十人ほどがプレーの順番を待っていた。 「あ、ケイ」  声の主はアダムだ。首にタオルをかけ、髪は汗で少し濡れていた。 「盛り上がっているね」  ケイはカメラを再びスタンバイにして、プレーの様子を撮影しようしていたら、また声を掛けられた。 「どうだい、ケイ。撮影は後回しにして、君も一緒にやってみないか」  声の主はコートの中にいたジム・マディソンだった。 「きっと驚くぞ。地球とは全く別のスポーツなんだ、これは」 「そうよ、やってみたら面白いわよ」  マディソンの後ろで汗をぬぐっていたのは、髪の短い小柄な女性だった。言葉の感じからするとイギリス人か。Tシャツにショートパンツ姿で、快活に笑っていた。長い時間プレーしていたらしく、タオルでぬぐったばかりの額には汗がかすかに滲んでいた。その健康的な笑顔を目にして、気持ちが和んだ。 「ジェニファーもこう言ってる。さあ、中に入れよ」  ショートヘアーの女性が差し上げた手のひらにハイタッチして、コートに足を踏み入れた。
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