8.ダンクシュート

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「なるほど」  ケイは力の入れ具合を変えながら、何度かボールをついてみたが、クリフォードの言う通り、バウンドの仕方は地球のバスケットボールとは明らかに違っている。手から離れる時は、力が充分に伝わらない感覚があるが、床から跳ね返ってくる力はそこそこ強い。風船が速いスピードで反発してくるようだ。  ボール扱いに少し慣れたので、ケイはドリブルしながら、ゴールに向かって走った。三度ドリブルしたあと、片手でボールをわし掴みにして、二歩助走し、三歩目で、地球より三十センチ高いゴール目掛けて思い切りジャンプした。 「うわっ」  踏み切った瞬間、ケイの体は想像を超えて勢い良く空中に放り出された。あっという間に一メートル近く飛び上がり、一気に視界が変わった。驚きの余り、シュートのタイミングを逸し、手から離れたボールは、リングの後ろのボードに当たって大きくバウンドした。さらに驚いたのは、滞空時間の長さだった。上方に向かった運動エネルギーがゼロになるまでに時間がかかった。下に落ちる力が弱いのが、はっきりと実感できた。空中に浮かんでいる時間は思い描いていたより長く、そして想像以上に遠くに飛んでいた。地球だったら、ウォーミングアップなしにこれだけの距離を跳んだら、足首か膝を痛めるに違いないが、着地の衝撃は思いのほかソフトだった。
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