42人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうだね」
マディソン副司令が、探るような眼差しを、ケイに向けている。
「驚きました。重力が三分の一しかないということは、こういうことなんですね」
「なかなかのジャンプ力だね。若いだけのことはある。そういえば、アイスホッケーの選手だったな。すぐに、クリフォードと同等のプレーができるようになるさ」
「クリフォードはバスケットの選手だったのですか」
「ああ、あの身長だからね。彼はね、地球では百九十センチあるかないかの身長だったのだが、ここに来て三年足らずで十センチ以上も身長が伸びたのだよ。もっとも、ここに来ると、ほとんどの人間は身長が何センチかは伸びるがね」
ケイは再びレイアップ・シュートに挑戦してみた。今度はジャンプの力を調節し、上手にシュートを決めることができた。アダムが拍手している。リングを通って落ちてきたボールを拾ったケイは、両手でボールをつかみ、思い切りジャンプして、今度はダンクを決めた。生まれて初めて決めたダンクは、とても爽快な気分をもたらしてくれた。自然に笑みがこぼれた。
「チームのメンバーが一人増えたな」
マディソン副司令がつぶやいた。コートサイドに歩いていくと、マグガイバーがケイに向かってタオルを放り投げながら言った。
「火星は低重力なので、トレーニングしないと、筋力や心肺機能が低下してしまう。こうしてバスケットボールで汗をかくのも、地球に帰る日のための大切な訓練なんだ。部屋の中で自転車を漕いだり、器具で筋肉を鍛えるだけじゃつまらないだろう」
最初のコメントを投稿しよう!