12.デイブからの返信

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12.デイブからの返信

 待ちに待ったデイブからのメールが届いたのは、さらに二日後だった。  圧縮されたファイルがどっさり添付されたメールは、全てを受信するのに十数分を要した。膨大な長さの本文に加え、ネットニュースなどの動画ファイルが三十以上も添付されていた。 「さすがデイブ。腕はなまっちゃいないな」  最初にケイは、メールの本文に目を通した。 〈やあケイ、火星での生活はどうだい。視聴率は今イチだが、ジェフの送ってくるレポートはお世辞抜きに面白いよ。これに興味が湧かないなんで、地球の人間たちの感性はどうかしちまったんじゃないかと思うくらいだ。  早速だが、問い合わせの件について調べてみた。  中国の火星飛行計画が暴露されたのは、先月の終わりごろだ。中国系の局がスクープした。スクープというより、これはリークだな。中国当局が意図的に流したんだ。最初のニュースは月面中国基地の地下で、新型ロケット発射台が完成したという発表だ。極秘裏に、三基を建造していた。同様に内モンゴルでも、同タイプのロケット三基が発射準備に入っている。完全に出し抜かれた火星開発本部は、大混乱に陥っている。  中国の政府筋によると、六基のロケットは全て同タイプで、名称はそのものズバリの「火星」。打ち上げ能力は二百トン級。二週間の間隔で六基全てを打ち上げると言っている。最初の一基は三週間後の元日に月から打ち上げる。月面から発射するものは軌道離脱速度、つまり初速が極めて速いので、火星までの飛行期間は他のロケットより約一カ月半短いと推定される。人が乗るにはキツイので、恐らく機械を積んでいくんだろう。相当量の資材が搭載されるとみられるが、化学ユニットやハブ(居住棟)だけでは、積載重量にかなりの余裕がある。機構本部は、その他に大量の工業用機材を積み込むとみているが、中国筋は、何を搭載するのか言明していない。〉
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