12.デイブからの返信

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 〈さあ、問題なのは、われらが火星開発機構だ。本部は、中国の計画に関して、ほとんどノーマークだった。現在、大慌てで今後の対策を検討している。  ケイのメールにもあった二人の民間人は、エリック・モンローとマルコム・クルゼイロ。いずれも俺たちが想像もできないほどの大金持ちだ。  ポイントはアメリカ人のモンロー。モンローは知っての通りファブリス財閥の御曹司だ。宇宙オタクで、財閥自体が宇宙開発に相当な資金を供与している。子飼いの下院議員(複数)に圧力を掛けて、強引にねじ込んだ。シモンズ大佐にもコネが利く。本部では、観光客は二年後からと考えていたが、モンローは待てなかったらしい。運用部門は抗議したが、変更不可能の最優先事項として位置づけられた。モンローだけだと目立つから、同じような事情を抱えていたクルゼイロと二人を乗せることにしたらしい。中国の計画が発表された後でも、これに関しては変更の動きがない。この金持ち二人は予定通りエンタープライズに乗るんじゃないかな。  現在、打ち上げ可能な船は、二カ月後に出発予定のマーズ・エンタープライズ2号機を除くと、退役間近のマーズ・フェニックス3号機しかない。本部筋によると、フェニックス3は、急げば三カ月後には出発できる。中国の計画を受けて、宇宙関係のロビイストが活発に動いているので、フェニックス4号機も整備棟から引っ張り出すかもしれない。  だが、ジェフの言うとおり、中国の大物量作戦に比べると、こちらの輸送態勢はいかにも貧弱だ。このままだとヤバいね。何か起死回生の一策が必要だ〉
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