12.デイブからの返信

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 二十四時間稼働しているテレビ局のディレクターは極めて多忙だ。その合間に、これだけの情報を集め、整理してくれたデイブに、ケイは丁寧な感謝のメールを書いた。  メールの送信ボタンを押した直後、ケイはミニ・コンピューターを抱えて自室を飛び出し、ブレ博士の居室を訪ねた。夜は更けていたが、ブレ博士はすぐに話を聞きたがった。サラとアダムはすでに就寝していた。 「メールの送り主は信頼できるジャーナリストなんだね」  デイブのメールと添付ファイル全てに目を通したブレ博士は、小さな声で言った。目がどことなく虚ろだった。 「外勤記者の経験はありませんが、情報収集能力は確かです。これまでに何度となく助けられたことがあります」  ブレ博士は無言で頷いた。アダムが寝返りを打つ気配がした。空調機のノイズがやたらと大きく感じた。 「分かった。ありがとう」  随分と長く無言だったブレ博士が唐突に口を開いた。 「ケイには借りができたね。そう遠くない時期に、お返しできるよう努力するよ」  彼はそう言って微笑んだ。先ほどの虚ろなまなざしはどこかに消え、いつもの精力的な表情をしていた。何かを決意したように見えた。 「ブレ博士、何か起死回生の一策はあるんでしょうか」  ここで質問しないのはジャーナリストじゃない。いや、職業というより、個人的にも強い興味があった。
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