13.ハッピー・ニュー・イヤー

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「コロニー・オリンポスの建設計画は君も知っているね。君が乗ってきたエンタープライズで、発電設備と化学ユニット、ハブなどをオリンポス山の麓に降ろした。今は地球から積んできた液体水素と火星大気の二酸化炭素を反応させて、酸素やメタン、水を自動生成中だ」 「人が住むための準備ですね」 「そうだ。概ね二カ月後には十人程度が住めるだけの酸素、水素、水が揃う。そして、次にやって来るエンタープライズが、工場建設資材の大半を届けてくれる。到着はおよそ七カ月後の予定。それに乗ってくるチャーリーと一緒に、クリフと何人かのBS(ビルディング・スペシャリスト)がオリンポスに向かって、コロニーと工場の建設をスタートさせるというのが当初のシナリオだった。本当なら直接オリンポスに人を降ろすのが効率的なのだが、何しろ一度の航海で運べる人数はパイロットを除くと四人だからね。このミッションのために用意できた技術者の席は一つだけだった。着陸カプセルは一つだけだ。遠回りだがやむを得ないのだ」 「BMI遠隔ロボットの最新型も三体届くと聞きましたが」 「さすが、耳が早いね。だからこそ、オペレートする優秀なBSがいるのだよ。最低でも三人、できればそれ以上を張り付けなければ、コロニーの建設は大幅に遅れてしまう」 「でも、次のエンタープライズでチャーリーが来ないとなると…」 「そう。クリフ一人ではやれることには限界がある。工場の稼動計画は大幅に後退するだろう。知っていると思うが、こと工場運転に関しては代役がきかない。金属加工の専門家はオリンポスに同行させないというのが、クリフの会社と本部との契約なんだ」
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