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的場は冷えたカリフォルニアワインを一口すすり、ひと息入れた。
「物量作戦の中国コロニーと戦うのに二年は待てない。そこで考えたんだ。工場の本格運用は遅れるかもしれないが、コロニー整備を前倒しすることはできる。電力の供給や鉱石の運搬・貯蔵の体制を整え、ハブ回りの環境もしっかり造っておけば、二年後の拡充の備えになる。そのために、ここから優秀な技術者をオリンポスに転勤させてはどうかと考えたのさ。それも一人や二人ではない。十人を一気に異動させたら面白いなと」
「十人も…。暮らしていけるのですか」
「もちろん。オリンポスの発電、化学ユニットは、五十人以上の居住を想定して設計されている。特に、発電設備は、工場を動かすために余裕を持って設計されていて、核融合炉さえちゃんと動けば、このマーズ・フロンティアの二・五倍の能力がある。居住棟はまだ二棟四人分しかないが、工場施設の外殻が完成すれば、そこに住むことはできる。人が住む器と食料さえ用意できれば、このフロンティアより、大勢の人間を養えるんだよ。工場はやむを得ないが、十人行けば、二年後に向けて、いろいろな準備を整えておくことはできる」
「移動手段は」
「オフロード車のマーズ・ビークルを使う。今基地にはタイプの違うビークルが三台ある。そのうち二台をオリンポスに差し向ける。ただ、ビークルは最大のものでも人と貨物合わせて二トンも積めば精一杯だ。人が四人乗ったら、せいぜい数日分の生活物資しか積めないタイプもある。二千キロを超す移動距離を考えると、定員を削って、その分食料や水素を積まねば、旅は完遂できない」
「一台に四人が乗ったとして、十人移動するには、ビークルが三台要りますね。でも、このコロニーにはビークルが三台しかない」
「そう。いくらこのミッションが重要だからと言って、すべてのビークルをオリンポスに向かわせる訳にはいかない」
「では、行くのはもっと少人数になりますね。十人をオリンポスに派遣するのは、無理なのでは」
的場は少し胸を張って言った。
「そこで、私はウルトラCを使うことにした」
的場は先程、このプランを不確定のような言い方をしていたが、彼の中で構想は既にはっきりした形になっているのだ。
「一体何を。そんな便利な乗り物がこのコロニーにあるのですか」
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