15.発表前日

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 ケイとペドロは他愛のない世間話をしながら、農場を散策した。 「あっちに農場を作るときは、ぜひ呼んでもらうことにするよ。近い将来、向こうでも農場が必要になるだろうしね」 「オリンポスでお会いできる日を楽しみにしていますよ」 「正直言って、第二農場の話がなければ、すぐにでも行きたいところだ。五年もここにいるので、この平原の単調な風景にも飽きてきた。だが、第二農場用の資材が届く前にいなくなったら、敵前逃亡で銃殺刑だな。何しろ、このコロニーの連中はごちそうに飢えている」  二人は声を上げて笑った。ペドロのビール腹が上下に揺れた。 「もう一つどうだい」  ペドロはもう一つトマトを差し出した。 「ところで、中国コロニーのことなんだが、中身は分かってきたのかい」 「国が国ですから、内容はほとんど分かりませんが、最初の読みは概ね当たっていたようですよ」 「工場を作るって話しだろ。金属製造に成功したら、コロニーをどんどん拡大させるんだな」 「二年後の次の便に備えて、相当な数の居住棟や工場棟を整備するでしょうね。アルシアは、金属鉱床という点で地の利を得ていますから。でも、水資源はどうかな。それに関しては、ここの方が恵まれているかもしれないですよ」 「私はね、工場よりも農場の方に注目しているんだ」  ペドロはドームの外に視線を移しながら言った。
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