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「はぁぁぁぁ……」
「ふおおおおお……」
鬼のようなトッピングで最早ベースがあんみつであったかどうかさえ確証が得られなくなった何かを前に、レイカさんと鈴音は宝の山でも掘り当てたような表情で目をキラキラさせている。
そして一口頬張る度に「おーいしー!」等と顔を見合わせている始末だ。
日野さんは鈴音のステキ写真を撮るのに先程からご執心である。
サクラは感性が猫なだけあって流石に人間の甘味には少々飽きが来始めているようで、最初の時ほどがっついて食べたりはしていなかった。
「そろそろ猫缶が恋しいと胃が訴え始めておるのである」
「……地元帰ったらにしてくれよな……」
僕は苦笑しつつ、冷たいお茶を一口啜った。
あれから一夜明けて。
お礼とお詫びを兼ねて何か御馳走したいと言った依子さんと、それを固辞しようとする婆ちゃんの大人バトルが朝から繰り広げられていたのだけれど、最終的にリーズナブルに甘味ならと言う所に着地した次第である。
「レイカさんも甘いもの好きなんですね」
「そりゃあね。私にとって食事は身体の維持には大して影響しないけれど、それでも美味しいものは美味しいし。それにデザート系はウチのお店の新メニュー考えるのにも参考になるのよ」
妖と言えども圭一さんと一緒に人として生活しているレイカさんは、案外商魂逞しい様である。
「レイカさん、食べても太らないのズルくないですか」
「咲ちゃん……目が、目が怖いわよ」
「フハハ、まあともあれ今回もレイカにはなんやかんや助力して貰って感謝であるな。ご苦労ご苦労」
「ちょっとサクラちゃん。いきなりあっち側行かれて残った霊気でみんなが放り出されないようにあの空間維持するのどんだけ大変だったと思ってんの」
「ぬおお、揺れる。世界が揺れる」
「この貸しは当面またウチでウェイトレスやって返してもらいますからね」
「どうもあのヒラヒラした「すかあと」と言うのは落ち着かんのであるが……まかないで猫缶二つ出すなら一考するのである」
「はいはい。他のお客さん達もいるんだからあんまりギャーギャーしないの」
バイト中の明日香さんが苦笑しつつこちらへやってくる。
「明日香おねーちゃん! あんみつおいしいよ!」
「どういたしまして。またいつでも食べに来てね」
口の周りを生クリームでべとべとにしながら鈴音が満面の笑みで言うと、明日香さんは満足そうに微笑んだ。
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