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「まぁそんなワケでお目当ての人物は不在なんだけど、まあそれでも良ければお茶して行きなさいヨ」
そう言って圭一さんは不器用に片目を瞑ってみせた。
「河川敷に少年の幽霊……か」
自分用に淹れたコーヒーを飲みながら、圭一さんが反芻する。
「レイカさんがウチへ来てから僕も超常的なものの存在を否応なしに信じるようになったけれど、よくよく考えてみると幽霊ってものには遭遇してないんだよネ。レイカさんだってホラ、結局は新堂怜花と言う故人の幽霊ではなかったわけだし」
「……確かに」
これだけ妖だとか怪異現象だとかに立て続けに遭遇するようになったこの一年余りでも、人間の幽霊と相対した事はこれまでも無かった。
「あの子が純粋な人間霊であれば、僕らも初めてのケースになるかもしれないんだよね」
「あー……う、うん。……そう、だね」
微妙に日野さんの歯切れが悪いような、若干目が泳いでいるような気がしなくもないけれど、気配りが大事だと言われた矢先である。
余計な詮索はすまい。
「でも、ソウタ君……だっけ? 河川敷の子」
「え、あ、はい。そうです」
「浅草の河川敷の公園……小学生くらいの男の子の幽霊で名前はソウタ。……うーん」
「何か、心当たりでも?」
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