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(2)
ドアベルの音に、客席の片付けをしていたらしいレイカさんが顔を上げた。
「ああ、二人ともいらっしゃい」
「どうも」
「呼出しなんて、何かあったんですか?」
僕らが尋ねると、レイカさんは少しバツが悪そうに苦笑する。
「ああ、んーと……話があるのは圭一君なんだけどさ。今丁度蛍光灯一本切らしちゃって買いに行ってんのよ」
言われてみれば、なるほど確かに圭一さんの姿が見えない。
「えと……じゃあ、出直しましょうか?」
「いやいや、そんな時間かかんないと思うから、コーヒーでも飲んで待ってて。呼び立てしたのはこっちだし、一杯なら奢るわよ」
そう言ってレイカさんは、カウンター席を指した。
「朝霧君」
日野さんが小声で話しかけてくる。
「どうかした?」
「ほら。圭一さんもまだみたいだし、どうせならあの本の話、聞いてみたら?」
本……ああ、依子さんの短編集の話か。
「そっか。そうだね」
「ん? 何の話?」
コーヒーを淹れる準備を始めていたレイカさんが不思議そうな顔をした。
「……ほうほう」
例の『逢魔が時の境界』に収録されている短編の話を聞いて、レイカさんは益々この件に興味が沸いた様子だった。
「ならないハズの鐘の音とともに河川敷に発生する怪異、ねぇ……。確かにその点については何か接点があっても不思議じゃないわね」
「でしょう?」
「けれど、今回起きている河川敷の少年の怪異とはストーリーが異なるから、予備校事件の時みたいに架空の怪異が形を持った……って言うのとはタネが違う。……んっふっふ。いいじゃないいいじゃない」
「……あんまり面白がらないでくださいよ」
「あーごめんごめん。けれど……ふふ」
そう言って二人分のコーヒーを僕らの前に置き、意味ありげに笑ってみせる。
「そうなるとね、圭一君の話もきっとこの件のヒントとして繋がってくると思うわよ」
「……?」
僕と日野さんはどういう事かわからずに、互いの顔を見合わせるほかなかった。
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