腎臓を売った。ホットドッグになった。

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腎臓を売った。ホットドッグになった。

「ねぇ!……俺、やっぱり納得できないよ!」  前を行く少女に、少年は声を上げる。 「……? 何が?」  その少年の言葉に、少女は本当にわからないというように首をかしげる。  そんな少女にしびれを切らしたように、少年はさらに声を荒げる。 「だって、おかしいじゃないか! ……君の腎臓一個売り払って、得たものがホットドッグ一個だけなんて!」  少年の視線の先にあるもの。それは、少女が手に持つホットドッグ。  ……さっきまで、彼女の腎臓だったモノ。 「……どうして?」  けれど、そんな少年の言葉を、本当にわからないというように、少女は無邪気に問い返す。 「どうしてって……」  そんな彼女の気持ちがわからなくて、困惑する。 「だって、私は今、幸せだわ。……こーんなご馳走食べたの、何日ぶりかしら! あぁ! 今、本当に嬉しいの。抱きしめたいぐらい! 私がこんなに幸せなんだもの。……腎臓? だったかしら。……そんなもの、安いものでしょう?」  彼女は、知らないのだ。  腎臓が一個あれば、ホットドッグなんて、飽きるほど買えるということを。  彼女は、知らないのだ。  布一枚めくったお腹についた、その傷の意味を。
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