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……だから思わず、少年は彼女から目をそらしそうになる。
けれど、それだけはできない。
それだけは、してはいけない。
そう思って、必死にこらえて、目をギュッと瞑る。
彼女に本当のことを伝えるのは簡単だ。……でも、今、自分が言うべき言葉は、本当にそんなことなのか?
少年は、自らに問う。
……いいや、きっと、違う。
自分が、言うべき言葉。それを、ゆっくりと、口の中で噛み締めて。
「俺が! ーーっ!」
今からする約束を、本当にしてしまっていいのか。
自分が、本当にそんなことができるのか。
少年にはわからなかった。
だから、一瞬、ためらった。
……けれど、言わなくてはならない。
今、目の前の彼女に向かって。
「ーー俺が、絶対大きくなって! そんなの目じゃないぐらい、たくさんホットドッグ買ってやる! ……だからーーっ!」
そんな、悲痛な思いが、どこまで彼女に届いたかはわからなかったけれど。
それでも、彼女は、そんな少年の姿に少しキョトンとした後、笑顔になって、言葉を返してくれた。
「えぇ! 待ってるわ!」
そんな彼女の言葉を聞いて。
そして、笑顔を見ていると、何だか、こんなに緊張しているのが馬鹿みたいになって。
それでも、告げた言葉はまぎれもない本心で。
だから少年も、ぶっきらぼうに、これだけ言った。
「……うん。待っててよ」
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