after story

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「おーい緒方ぁ、お前またあいつに睨まれてんぞ」 「うわっ、ホントだ…。なに、仲良かったんじゃねぇの?ケンカでもした?」 「してないよ」 「「何で嬉しそうなんだ…」」 友人のご指摘通り、今日も俺は背中に鋭い視線を感じている。ふとそちらを見遣るとパチリ、と目が合ってすぐに逸らされた。 俺と、加野くん。 それぞれの空間に意識を戻しても、やっぱりどこか繋がってるような…変な感じは俺だけが感じているのかな。 それにしても。 今まではずっと怖くて仕方が無かったあの鋭い視線も、今では可愛らしくすら思えてしまうからおかしい。 本当に、おかしなことだ。 あの切れ長の瞳に睨まれることが怖いことから嬉しいことへと変わってしまうなんて、ちょっと前の自分なら想像もしなかっただろうな…。 なんて。不自然に上がりかける口角を何とか手の甲で隠しながらも、やっぱり胸の奥のふわふわした感じは拭えないのだった。 「…また肩組んでた」 「不可抗力だよ」 「わざとじゃねぇの?そんなに俺を嫉妬させたいワケ?」 「ん"ん"っ…」 変な声出かけた。 しっと。嫉妬…。 それは今の俺にとっては特別な言葉だ。 その言葉を反芻しながらまた嬉しい気持ちが込み上げてくるが、何とか表情を取り繕う。 そんな嬉しいとか、俺は最低なのかな? でも本当に、わざと怒らせてる訳じゃあないんだ。これは本当の本当。 俺の恋人がこんなに嫉妬深いなんて今まで知らなかった。 そしてこんなに表情豊かで素直だってことも、一緒にいなきゃ分からなかったな。 それから俺も実は結構、負けず劣らずの嫉妬深い性格だってことも…。 「そんなに言うけどさ、そっちだって結構触らせてんじゃん。腕組んでたり…背中叩かれてたりしてたの、見てたんだからな」 「組んでないし。勝手にくっついてきただけだし」 「ギルティー」 「お互い様だろ」 むむっ、と眉間に皺を寄せて睨みつけてみるも、何故だか気が抜けたような顔で笑われてしまった。そんなに変な顔してたのだろうか。 何かムカつく。 「ムカつく」 「ふふっ、まだまだだなぁ」 「何がだよ」 「俺の方がもっとムカついてたし、まだ嫉妬してる」 ふっと柔らかい微笑を向けながら言うセリフではない。なのにその意味を、言葉の奥の彼の気持ちを全く知らないなんてもう言えない俺は、何も言えなくなってしまった。 どうやら俺はまだまだ彼には叶わないらしい。 色んな意味で…。ムカつくけど。 「やっぱりムカつく」 「手、繋ぎたい」 「文脈って知ってる?」 「上書きしよう?今日はどこ触られたか、ちゃんと教えて」 「………見てたくせに」 ふふふっと笑うその顔はあどけなくて、本当に楽しそうで。見ているこちらもつられて笑ってしまいそうになるが、忘れてはならない。 「やっぱりまだまだ、きらいだよ」 「…知ってるよ、ばぁか!」 俺の恋人は随分と嫉妬深くて、意地悪だってこと。
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