「嫌い」

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「何でって、…何でもいいだろ。もう十分じゃんか」 「もしかして…あの女に何か言われたのか?」 「あの女?」 「えと、はな、何だっけ…花本?とかいう奴」 こいつ、自分に告白してきてくれた子の名前も覚えてないのか。最低かよ。 …やっぱりそれ程沢山の子達に告白されてきたのかな。 「誰にも何も言われてないよ。…これは俺の意思だ」 「なんで?」 「だから、だから…」 君に友達以上の感情を持ってしまったからだよ。…なんて、言えない。言える筈がない。 「俺のこと、嫌いになった?」 「え、何言って」 「俺があの女のこと振ったからムカついた?なら告白受け入れてあいつと付き合えば良かった?」 「は、花本さんのこと?彼女は今関係無いだろ」 「…関係無いのか?」 「無いよ。彼女は関係無い」 「じゃあ何で突然」 「加野くんのこと、もう十分知れた…から」 「それで?俺と一緒に居るのが、もう嫌になっちゃったの?俺そんなに嫌な人間だった?」 「な、何言ってんだそんな訳ないだろっ!ていうか、俺のこと嫌ってんのは加野くんじゃん?!だから俺はっ、俺は…」 この先は、言っちゃいけない。 駄目だって思うのに、今にも溢れ落ちてしまいそうだ。 痛くない程度に拘束された両手はそれでも離される気配が全く無い。俺を掴む少し震えた手と、迷子みたいな瞳。いつもほとんど無表情なのに、薄い唇は何かを堪えるようにぎゅっと固く結ばれている。 だから何で、そんな顔するの? 俺のこと、嫌いなんじゃないの? だったら何だってそんな必死になって俺のこと引き止めようとするんだ? ねぇ、「何で」はこっちの台詞だよ。
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