「嫌い」

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「俺は、何」 「だから俺は…」 「ん?」 何でそんな目で見てくるんだよ。何でいつもみたいに鋭い眼差しじゃないんだ。 何で、俺にそんな優しくするんだ。 「もうやめてよ…。俺のこと嫌いなんだろ?スキンシップ苦手なんだろ?じゃあ何でこんなことすんの?何で、うぉっ?!」 「…そうか。分かったかもしれない」 まただ。 両手首の拘束が解かれたと思ったら今度はそのまま、真正面からぎゅううっと抱き締められてしまった。あの日みたいに、鼓動が、呼吸が、匂いが近くなる。 バレる。バレてしまう。 抱き締められてどきどきしてるこの鼓動の速さが伝わってしまったら、俺の気持ちがバレてしまう。全身密着しているこの状況では逃げ場が無く、それでも心臓はどきどきと速く脈打つのをやめてくれない。 「やっぱり。緒方、どきどきしてる」 「っ!離せ、離せよっ!!お願いだからっ」 ぐぐっと思い切り力を入れて肩を押し返そうとしても逆により強く抱き寄せられてしまった。睨み付けてやろうと顔を見ると彼は何故か嬉しそうに頬を緩め、うっそりと目を細めていた。 「あぁ、顔も赤い。真っ赤だ」 「だから、だからぁ…」 「うん。ごめん。ごめんね。悪かったよ。お前ばっかり俺のこと掻き乱してくるから、意地悪したくなったんだ。ちょっとやり過ぎちゃったな。本当にごめん」 「え…?どういう?ん、」 綺麗な顔が近付く。いつもは鋭かった切れ長の瞳が伏せられて、長い睫毛がふっと艶やかな頬に影を落とした。その光景に見惚れていると、唇に柔らかい感触が押し当てられる。 そっと一瞬で離され何が起きたかも理解出来ないまま、直ぐに二回目の感触が降って来た。今度のはさっきよりも長く、熱い。 ぺろりと唇を熱い何かがなぞる。驚いて口を開けば、それを了承と取ったのか加野くんの舌が俺の口の中に遠慮無く侵入してきた。
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