171人が本棚に入れています
本棚に追加
「それでさぁ、その時先生が入ってきて」
「わ、やべーそれっ。ははっ」
休み時間、クラスメートと談笑していると何かに気づいた友人に突然「おい」と小声で小突かれ、その友人の視線につられて俺も扉の方に視線を向けた。するとやっぱり今日も…。
「ひぇっ」
あぁ、またあの目だ。
もう何度目か分からないそのナイフのような視線に刺され、一瞬胸がつきんと痛んだ。
「なぁお前、また加野くんにめっちゃ見られてるぞ」
「うわぁやっぱ美形のキレ顔怖ぇぇ…緒方お前マジで何したんだよ?」
「何も覚えねぇよっ?!というかまともに話したことも無い筈なんだけど、な、何で?」
そう聞いても友人達は「さあ?」と首を傾げるばかり。まるで他人事のように全く真剣に考えてくれる気配がない。いや実際こいつらにとっちゃあ他人事なんだろうけどさ…。
それにしても俺、本当に何かしたっけ?
加野くんと同じクラスになってからというもの、事あるごとに何故だかああしてガンを飛ばされる様になってしまった。特にこうして友人達とじゃれている時、更にその視線が鋭くなることに気づいたのは最近のこと。騒ぎ過ぎたか?うるさ過ぎたのかな。何というか、俺達の笑い声がうっとおしい、とか?
それにしても睨み付けられるのは毎度のこと俺だけだし、かと言って俺が一際大声で騒ぎ立てている訳でも無ければ加野くんに迷惑をかけた覚えも無いし、何故あんなに鋭い視線を投げられるのかが分からない。寧ろ最近では彼に睨まれるのが怖くて小声で話すようにすらしていたというのに。
最初のコメントを投稿しよう!