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「ふぁっ?!あっ…」
「ん、ふふ…耳まで真っ赤…かわいい…」
深く口付けられながら、耳を塞がれたり耳朶を弄られたり。そのせいか卑猥な水音が余計に俺の世界に響いた。力が抜けてその場に崩れ落ちそうになるのを、加野くんの腕が支える。
俺は呼吸するので精一杯なのに、加野くんは何でそんなに余裕があるんだ。やっぱり慣れてるのか、こういうの…。駄目だ、こんな時にまでおかしなことを考えてしまう。
酸素が足りないのかぼうっとしてきた頭で、触れられた嬉しさと気持ち良さに流されそうになる自分を叱咤した。
…やっぱりおかしい。おかしいよ、こんなの。
さっきより力は入らなかったけれど、それでも踏ん張ってもう一度加野くんの肩を押すと今度は案外すんなり離れてくれた。
離れる瞬間互いの口から伸びて、細く途切れていく透明の糸がまるで赤い糸みたいで。切れないで、なんて馬鹿なことを願った俺はもうどうしようもないのかも知れない。
「ぷはっ、はぁ…。だ、だから何でこんなことすんのっ?!」
「やだった?」
「嫌…じゃないから困ってるんだよ…。だって、だってお前、俺のこと嫌いって…」
「言ったよ。そうやって言葉通りに解釈しちゃうところも本当に馬鹿で、可愛い」
「かわ、いい…?それってどうい、んんっ?!」
そうして与えられる、三度目の口付け。
意地悪なこいつはやっぱり理解する時間も与えてくれない。それとも理解出来ない俺が馬鹿なんだろうか。
もう、何も考えられない…。考えたくない。
「んっ、ふふ」
「ん、んぁっ…ふぁ」
「かわいい…おがた…」
何秒、何分経ったんだろう。漸く満足したのか、加野くんは俺の口内を存分に堪能するとやっと顔を離してくれた。暫くの間俺は彼の肩をぎゅっと掴んではぁはぁと酸素を求めて喘ぐことしか出来なかった。
俺が呼吸を整えているその間彼はすっと長い指を俺の髪に差し入れて、まるで子どもでもあやす様に緩々と撫で下ろしていた。
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