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すべてを冗談で一笑できればいいが、あいにく目の前には半透明の人間が四人。霊感もない自分がなぜいきなり彼らの姿を見ることができたのかは不明だが、実際の幽霊にことを説明されては、信じるほかない。
できれば夢であってほしいと願う反面、幽霊の姿になってもジークリートの魂に寄り添おうとする彼らの健気さに胸を打たれた。
ラシェルは、じっと彼らを見つめて、少し俯き加減に口を開いた。
「……残念なんじゃない?」
ルイ・アベルは「何が?」と言いたげに首をかしげてみせる。
「僕みたいな子が、その、ジークリートの生まれ変わりで。ジークリートってすごい人だったんでしょ?」
『すごいといえばすごいけど、ただの変態といえば変態だった』
「は? へ、へんたい!?」
なんだそれ、と聞き返したラシェルに、何事でもないかのようにルイ・アベルは頷く。
『気にする必要はないよ。僕たちは魂に誓いをたてている。だから、きみがジークリートだろうがラシェルだろうが、僕たちの姫に変わりはないんだ。そうでしょ? ルイ・ジョセフ』
ルイ・アベルが後ろにいたルイ・ジョセフへ視線を向ける。
ルイ・ジョセフは渋い顔をさらに渋くして無言で頷いた。四人のなかでもっとも年長の彼は、ぱっと見た感じ、四十歳は過ぎているだろう年齢だ。
だが近所に住むローズの父親のように腹は出ておらず、渋い格好よさがある。どことなく気品が漂っているが、もしかしたら貴族なのかもしれない。
そんなことを考えているあいだに、いつの間にか静かになったレオポルドとリオネルが、床に正座していた。
「あ、床は埃たまってるから、椅子に座って……あれ、きみたちって埃付着するんだっけ」
半透明な彼らの事情がいまいちよくわからない。
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