第一章

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 疑問に思っていると、一階からベルの声がした。 「そろそろ起きなさいよー。朝ごはん作ったからー」 「はーい!」  咄嗟に返事を返して、いつものように着替えるために衣に手をかけた。  その瞬間、その場から動こうとしない幽霊たちを見て、先ほどレオポルドが言っていた言葉を思い出す。 「……ずっとここに住んでる、って言った?」 『言ったぜ。それがどうしたんだ?』  言葉を掬い上げられたことが嬉しいのか、レオポルドは満面の笑みでラシェルを見返してきた。  正反対に暗い顔になるラシェルは、そのまま視線をそれぞれの幽霊に向ける。ルイ・アベルだけが気まずそうに視線を逸らした。 「ってことはもしかして。寝顔を見たり、着替えをのぞいたり、独り言ぶつぶつ言っているの聞いてたりしてるわけ?」 『そんなの当たり前だろ。俺たち、姫のそばにずぅーっといるんだから。あ、さすがにトイレだけは外してるから安心しなって!』  自慢げに答えたレオポルドを睨みつけ、ラシェルはぎりりと奥歯をかみしめた。 「信じられない! 僕をなんだと思ってんのっ!?」  まさか、これまでの生活が成年の男たちに赤裸々だったなど、十六歳の乙女にする仕打ちではないんじゃないか。  恥ずかしくて涙声になって叫んだラシェルに、レオポルドは慌てたように両手を振った。 『どうしたんだ姫っ、なにか気に障るようなことしたかっ!?』 『せっかくわたしたちと会話できるようになったのに、お祝いもしていないから拗ねてらっしゃるのでは』  見当違いの案を出したリオネルに、レオポルドがパチンと指を鳴らした。 『それだ! よし、胴上げしよう胴上げ!』 『……見えるようになったけど、昨日までは姫に障ることもできなかったじゃないか。急に触れるとは思えないけど』 『やってみねぇとわかんねぇって。アベルもほら、姫を囲って』 『まぁ、やってみるだけいいか』  ルイ・アベルも加わって、三人がじりじりにじり寄ってくる。微妙に青年二人が笑みを浮かべているのが怖い。
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