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疑問に思っていると、一階からベルの声がした。
「そろそろ起きなさいよー。朝ごはん作ったからー」
「はーい!」
咄嗟に返事を返して、いつものように着替えるために衣に手をかけた。
その瞬間、その場から動こうとしない幽霊たちを見て、先ほどレオポルドが言っていた言葉を思い出す。
「……ずっとここに住んでる、って言った?」
『言ったぜ。それがどうしたんだ?』
言葉を掬い上げられたことが嬉しいのか、レオポルドは満面の笑みでラシェルを見返してきた。
正反対に暗い顔になるラシェルは、そのまま視線をそれぞれの幽霊に向ける。ルイ・アベルだけが気まずそうに視線を逸らした。
「ってことはもしかして。寝顔を見たり、着替えをのぞいたり、独り言ぶつぶつ言っているの聞いてたりしてるわけ?」
『そんなの当たり前だろ。俺たち、姫のそばにずぅーっといるんだから。あ、さすがにトイレだけは外してるから安心しなって!』
自慢げに答えたレオポルドを睨みつけ、ラシェルはぎりりと奥歯をかみしめた。
「信じられない! 僕をなんだと思ってんのっ!?」
まさか、これまでの生活が成年の男たちに赤裸々だったなど、十六歳の乙女にする仕打ちではないんじゃないか。
恥ずかしくて涙声になって叫んだラシェルに、レオポルドは慌てたように両手を振った。
『どうしたんだ姫っ、なにか気に障るようなことしたかっ!?』
『せっかくわたしたちと会話できるようになったのに、お祝いもしていないから拗ねてらっしゃるのでは』
見当違いの案を出したリオネルに、レオポルドがパチンと指を鳴らした。
『それだ! よし、胴上げしよう胴上げ!』
『……見えるようになったけど、昨日までは姫に障ることもできなかったじゃないか。急に触れるとは思えないけど』
『やってみねぇとわかんねぇって。アベルもほら、姫を囲って』
『まぁ、やってみるだけいいか』
ルイ・アベルも加わって、三人がじりじりにじり寄ってくる。微妙に青年二人が笑みを浮かべているのが怖い。
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