第一章

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 ラシェルは底知れない恐怖を感じて、ゆっくり後ろに下がった。 「ちょ、ちょ、ま、待って。なに、胴上げって、別に僕、そんなっ、ぎゃ――――っ!」  いつの間に回りこんだのか、背後からルイ・ジョセフに両腕を抑えられた。触れた瞬間、人肌の弾力と同時に氷のような冷たさを感じて、彼らが幽霊であることを改めて知る。  緊張でこわばる身体が、これまでにない奇妙な浮遊感を伴った。 『おお、触れんじゃん。ひゃっほーい』 『せーの、そーれ。ふふふ、久しぶりですね』 『……そうだね』 『うむ』  近くなったり遠くなったりする天井を見上げて、何が起こっているのか理解できないまま。 ラシェルの意識は、すこーんと飛んでいった。  *
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