第二章

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 ルイ・ジョセフたちはジークリートを愛し、ジークリートは女王を愛した。それぞれ叶わぬ恋を胸に秘め、忠誠という名で縛り上げてきたのだ。 (なんかそれって、切ない、かも)  しん、と部屋が静寂で満ちた。ぼんやりと窓から差し込む光に暖かなものが混ざりはじめる。 「……夜明けだね」 『うむ』  一瞬、サジェに残してきた母を思い出して、懐かしさが胸を占めた。帰りたい衝動に駆られたが、そうも言っていられない。  もぞりとベッドから這い出し、窓から城下を見下ろした。干害は都を襲ってはいないものの、不作となればやがて緩やかに都も余波を受けるだろう。 (……干ばつ、とか。わけわかんない)  重い小石がコツンの胸の中に落ちてきたような気がして、ラシェルはこっそりため息をついた。
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