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途端に、褐色肌の青年が整った眉をさげて、しょんぼりとうなだれる。もぞもぞと壁を通り抜けるように、全身を現した。
『……これ、喜んでいいんですか』
『姫が復活したんだ、喜ぶべきだろ! ひゃっほーい!』
ラシェルは目の前がくらくらした。
飄々とした青年姿の幽霊と、端正な顔立ちの優男の幽霊が、半透明な姿で目の前に立ちふさがっているのだ。朝っぱらからなんの嫌がらせだろうか。
「あ、あ、アンタたちいったいなんなんだ。僕の部屋で、なにをしてっ」
涙目になりながら訴えれば、飄々としたほうの青年が、ふふんと笑って両手を広げてみせた。
『ああ、記憶は戻ってないんだな。まぁ、しゃあないわな。一回死んでるし』
『でしたら自己紹介しましょうか』
『おう。俺は』
「どうでもいいから消えて――――っ!」
ついにかぶっていた布団までもを投げつけた。
言葉を遮られたことに怒ったのか、飄々とした青年の眉がつりあがる。
『なんだよ、話くらい聞けっての! そういうとこ、昔と変わらんねぇ。ああ、にらむなって。とにかく落ち着け。俺の話聞こう、な?』
うう、と涙目で見上げれば、ふいに、二人の青年が眉を顰めた。なにかを堪えるような複雑な色をみせて、そろそろと近づいてくる。
「こ、来ないで!」
『でも泣いてんじゃん。なぁ、なにか悲しいことあったんか?』
「なにって、アンタたちが」
『そうですよ。我らが姫の涙の理由を知りたいです。もし誰かのせいなら、許しがたい。わたしが姫の仇をうってきましょう。どこのどなたになにをされたのです?』
『こ、こらリオネル。そんなみっちり訪ねて、もし言いにくいことだったらどうするんだ。姫はこうみえても女の子なんだぞ!』
『ですが、理由を聞かなければ反撃のしようもないでしょうに』
『そりゃ、まぁ、そうかもしんねぇけど』
リオネル、と呼ばれた青年は考える素振りを見せて、それでもやはり少しずつ近づいてくる。
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