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「よーくん、今日、奈緒ちんからチョコもらった?」
うん?
みんなに奈緒がチョコを配ってるの見てたじゃないか……外面はみんな同じで、僕のだけ中身は違っていたけれど。
それに理紗子だってくれたし、唯一くれなかったのは――柚子だけだよ。
「そりゃ、貰ったけど。柚子だってその場にいただろう。ほら、これ」
僕は鞄から綺麗にラッピングされた袋を取り出す。
「ん。知ってる」
「じゃあ」
「中身、みんなと違うよね」
まぁ、柚子だって気づくよね。
「そりゃ、まぁ」
「ふーん」
ふーんって。一体何が言いたいのさ。
「柚子のチョコ欲しかった?」
まぁ、それは、
「まぁ、それは、欲しかったけど」
でも、たぶん和也にはこっそりとあげたんでしょう。
「柚子は、義理チョコとかあげるタイプじゃないでしょ。それに、和也にさ、その、悪いし」
「ふーん」
ふーんって。
しばらく僕と柚子は見つめ合い――否、睨み合うように無言のまま視線をぶつけ合う。
やがて、彼女は背負っていたリュックを肩から外し、ごそごそと中から何かを取り出した。手にとったのは、いかにも手作り感のあるピンク色の可愛らしい包み。それをずいっと僕に差し出す。
「ちょこ」
「……チョコ?」
「欲しい?」
「ええと、さっきも言ったけど、あの」
それは、欲しい。
「欲しい」
柚子がふふんと鼻を鳴らした。
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