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「よーくんがさ……これからの人生誰とも恋愛しないなら、このチョコあげてもいいのだ」
なんだ、それ。
柚子はにやりと笑い、ただのバレンタインの義理チョコの授受だけで、こっちの人生を陽気に壊しに来ていた。まったくいつもいつも、柚子の言うことはいちいち大きすぎる。
「それはちょっと……僕、そのチョコ受け取ったら一生童貞でいろってこと?」
「別に、恋愛しなくてもやれるじゃん」
やれるじゃんって。
「そりゃまあ、そうだけどさ……条件釣り合わなくないかな」
「そうかー? じゃあ、チョコの他に、もう一つくらいお願い聞いてもいい」
なんで柚子が上から目線なんだろう。
「じゃあさ、その、僕が恋愛するのを、ええと、諦めたら」
なんだろう。ええと、僕が今一番柚子にして欲しいことは――
「……諦めたら」
「諦めたら?」
僕は柚子に何を望んだらいいんだろう。彼女に何をして欲しいんだ? ああ、そうか。
柚子のこと、少し困らせてやれ。
「僕と付き合ってよ」
これなら僕が一生誰とも恋愛しないっていう前提と矛盾する。それに柚子には和也っていう想い人がいるし……ね。
多分、柚子は困惑するだろうけど、すぐにそれは冗談だって思うはず。
僕の本音――柚子のことがずっと好きだったって気持ちにはきっと気付かない。
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