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えっ。
びっくりした一珂が立ち止まると、島村が近づいてきた。
「……何?」
素っ気なく言ってしまい、慌てて言い直す。
「ごめん。えっと……ゼミ合宿の説明でわからないことあった?」
「ないよ。あのさ……森沢って真山の友達だよな?」
「そうだけど……。どうしてそんなことを聞くの?」
「俺、真山とは小学から一緒なんだ。所謂幼なじみっていうやつ。森沢いつも真山といるから覚えてたんだ」
「…………どうも」
小さく会釈し、用が済んだのならと背を向けようとした一珂の腕を島村が掴んだ。
「森沢、ギターやってるだろ。商店街で時々歌っているよな。なあ、俺達と一緒にバンドやらないか?」
「バンド?」
「そう。master architect《マスターアーキテクト》っていう名前なんだけど、ギターの奴が辞めちゃってさ。学祭まで時間がないから即戦力のやつ探してたんだ。どうかな」
バンド……。
一珂の中で懐かしい思い出がよみがえる。この2年ずっと1人で歌ってきたが、もう一度バンドをやってみたいのも確かだ。
「いいけど……。でも何でそんな名前?」
master architect《マスターアーキテクト》というのは、建物と景観との融合をはかり、住みやすく美しい町作りの基本計画を担当する建築家の事だ。
「何となく響きが好きで………それにほら、俺将来建築家になるつもりだから」
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