水際《すいさい》

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真山とは2年以上親しくしているが、真山から島村の事を全く聞いたことがない。普通同じ学部に幼なじみがいたら仲良く話しているのを見かけたり、話題にでたりするものじゃないだろうか。 「島村って……」 疑問を口にしようとしたが、島村が出した大きな声に遮られてしまった。 「そうか、この前の人が森沢の兄貴なんだ」 「え?」 「ほら、貸しスタジオで一緒にいた人だよ」 確かに貸しスタジオには行ったが島村には会っていない。首を傾げる一珂に島村が言い募った。 「覚えてないのか、『スタジオ K』で俺達ぶつかりそうになっただろ?森沢ともう1人が中から出てきた時だよ」 「ああ、あれ森沢だったんだ」 「そうだよ」 「あの時俺、お前の連れにめっちゃ睨まれたんだよな」 「連れって、葛城さんに?」 「ん?」 「いや、何でも。あれは兄じゃないよ、バンドのメンバーだった人。それにしてもよく俺だって分かったな」 「分かるだろ、同じ学部だし……。まさかお前俺のこと……」 「うん、今日初めて知った」 やっぱりそんな気がしてたんだと呟きながら、島村はがっくりと膝をついた。
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