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「一珂は何してるんだ?」
「あー、ゼミ旅行の事で山南先生に呼ばれてるんだ」
「そう言えば、手伝いを頼まれてたな」
「頼まれたというか、俺だけバイトしてないからって押し付けられたんだよ」
少し前まで八百屋の手伝いをしていた一珂だが、おじさんの復帰と共にそれもなくなってしまった。
「一珂もバイトすればいいのに、紹介しようか?」
「いい。真山のバイト先って女子に人気のカフェだろ?この前雑誌に紹介されてたらしいが、あんな顔面偏差値高すぎなカフェで俺が働けるわけないだろ」
「そうかな。俺が客だったら一珂が働いてる店に行きたいけどな」
「サンキュ………でも気を使われるともっと落ち込む」
「別に気なんか使ってないけど。俺は本当に……」
この話はおしまいという風に一珂が話題を変えた。
涼しい室内にいるとつい忘れそうになるが、窓の外から聞こえる賑やかなセミの声が暑い夏を主張している。
「ゼミ合宿真山も行くだろ?」
「もちろん。今年は楠原教授のとこと合同なんだろ?」
「そうらしい」
楠原教授は過去に何度も賞を受賞した実績の持ち主だが、気性が激しく気に入らなければゼミ生にまで怒鳴り散らすという噂があり今年は3人しかゼミに入らなかったと聞いている。
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