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野菜も肉も全て美味しくて出された側からパクパク食べていると、隣から視線を感じ思わず手を止める。
「何ですか?」
「いや、本当にうまそうに食べるなと思って。無理矢理だったけど連れてきて良かったよ」
「……普通だと思いますが」
「そんなことないよ。ね、中町さん」
「そうだね、こちらとしては一番美味しい状態で出しているから葛城君みたいにすぐにパクパク食べてくれるのが一番うれしいよ」
シェフはにっこり笑いながら、ガーリックライスを盛った皿を葛城と若林の前に置いた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「やっぱり最後はガーリックライスだよね。いただきます」
鉄板の後片付けを始めたシェフと、美味しそうにガーリックライスを頬張る若林を見ながら葛城はふぅと息をもらした。
昔から人に見られる事が苦手だった。一珂の兄である一輝にバンドに誘われた時もそんな理由から最初は断った。
「ギターあんなに上手いのに何で?」
「ギターを弾くのは好きだけど、人前が苦手なんだよ。特に女子。……俺嫌われてるから」
「はぁ?好かれてるの間違いだろ」
「いや、嫌われてるよ。視線を感じて見返すと途端に顔をそらされるし、指差してこそこそなんか言われるし。どうせ暗いとか怖いとか言われてるんだろうけど」
「いや、それは…」
思いっきり拗ねる葛城の肩をポンポン叩きながら、「葛城って結構子供だよな」と呟いた。
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