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「嫌ではありません。ただ、俺に出来るかなという不安はあります」
素直な返事を聞いて山南が笑顔になる。
「それは……分かるよ。僕も教授も我が儘だし、ゼミ生もみんなクセがあるからね」
そうですねと肯定するわけにもいかず苦笑いを浮かべる一珂を山南が優しく見つめた。
「だけどね、僕は君なら立派にやり遂げてくれると思うんだ。これでも人を見る目は確かなんだけど、僕が信用出来ない?」
「いえ。ただ、今回俺が選ばれたのはバイトをしてなくて暇だったからで……」
「そんな事で僕が君を選んだと思ってるの?バイトなんか言い訳にさせるわけないよ。もし君がバイトをしていても僕は君に手伝いを頼んでいたよ」
いたずらっぽく山南が笑う。
「先生……」
「まあ、いくら誉められても面倒には変わりないけどね」
これはうまく丸めこまれたのかな。だけど全然嫌な気がしない。葛城さんも課長さんに仕事を任された時、こんな気持ちになるのかな。
先生と自分の関係が課長と葛城のそれにどことなく似ている気がして、一珂の口元がほころんだ。
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