水声《すいせい》

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* 葛城はコンビニで買ったアイスカフェオレを飲みながら、たまった書類を黙々と片付けていた。 企業エントリーが始まった3月から人事として忙しく過ごしていたが、ようやく内々定を出し(内々定としているのは経団連による「採用選考に関する指針」で「正式な内定日は、卒業・修了年度の10月1日以降とする」とされているためで、実際は内定とほぼ同じ認識だ)、採用に関する業務は一旦終了となった。気持ち的にはホッとしたい所だが後回しにしていた書類が沢山有り、そうもいかないのが現状だ。 定時の時報が鳴った時、葛城は小さくため息をついた。 今日こそはイチの歌を聞きに行けると思ったのに。 落ち込んでいても仕方がないと気持ちを入れ換え再び書類に向かった時 「葛城、ちょっと付き合え」 「はい」 課長の岸田が葛城の側を通りすぎながら静かに告げた。 もしかして例の……。 そのまま部屋を出ていった岸田を追いかけようと席を立った葛城に前の席から声がかかった。 「また課長のお供じゃない?大変ね」 すっかり帰り支度を済ませた先輩が気の毒そうに見つめてくる。そう言えば今日は合コンだと朝からはしゃいでいたな。 「大丈夫です」 「それならいいけど。なかなか言いにくいと思うけど嫌なら言えばいいよ。アルハラだっけ、今はそういうのに厳しい時代だしね」 これまで何度か課長から誘いを受けているのを人事課のみんなは無理矢理だと思っていたのか。いや、無理矢理には違いないが、そのお陰でイチと再会できたし、風早さんの店で飲むのは嫌いじゃない。
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