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「任務に旅立つ時、それを持って行くがいい」
先ほどから伯爵が話している言語は、そのすべてが【ドイツ語】だった。もちろん、キャサリンもドイツ語で答えた。
「ありがとうございます大佐。大佐から頂いたこの【本】を御守りとして、きっと大切にします」
キャサリンの発音は完璧だった。誰がどのように聞いたとしても、完璧なドイツ語だった。
伯爵は、若く美しく一分の隙も無いキャサリンの外見的印象と、見かけ倒しでは無い極めて優秀な成績と、そして諜報員としての持って生まれた適性に、改めて満足した。だが伯爵は、まだどこかに不安を感じている自分自身に対し、少なからず苛立っていた。だが、そんな素振りは決して見せない。
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