キャサリン

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「初めまして、ゲルハルト少佐。私はクラーラ・シュミット。ディーティンガー博士の秘書です」 「どうぞ、よろしく。ところで、ディーティンガー博士は御在宅ですかな」 「生憎ですが、博士はまだ朝食を済ませてはおりませんのよ」 「かまいませんよ、クラーラ。博士の朝食が済むまで、私は部下と共に外で待たせていただこう。それにしても、あなたのような若く美しい女性が秘書だなんて、博士が羨ましいですな。早速ですがクラーラ。あなたの生年月日をお聞きしたいのですが」 「一九二五年五月三日生まれです」 「春の気持ちの良い朝なのに、尋問ばかりするようで申し訳ない」 「いいえ。それがあなたの仕事であり使命なのでしょう? 総統閣下の勝利にほんの僅かでも貢献出切るのならば、私としても嬉しい限りですのよ」 「では御言葉に甘えましてお聞きします。あなたの本当の出身地を知りたいのですが」 「本当の出身地? 嘘も真もありませんわ。私はベルリン生まれのベルリン育ちです」
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